離婚歴は戸籍を見ればすぐ分かる?|妻の婚姻前の戸籍からパッと見では分からないことも

離婚歴は戸籍を見ればすぐ分かる、とは限りません。現在の戸籍と婚姻前の戸籍の2枚を見ても、転籍や改製によって、過去の離婚が表面に現れていないことがあります。 

 戸籍を見れば、その人が離婚したことがあるかどうかはすぐ分かる。なんとなく、そんなイメージがありませんか。

もちろん、過去の戸籍まで順番にさかのぼって確認すれば、その人の婚姻や離婚の経過を確認することができます。 

しかし、現在の戸籍一枚に、その人のこれまでの婚姻歴がすべて記載されているわけではありません。

さらに、現在の夫婦戸籍から一つ前、つまり婚姻前に妻が入っていた戸籍まで確認しても、過去の離婚歴に気づかない場合があります。 

今回は、なぜそのようなことが起こるのかを、戸籍の流れに沿って説明します。

この記事の内容
・前提となるケース
・1 離婚して親の戸籍へ復籍する
・2 その後、本籍が別の市区町村へ移った場合
・3 その後、現在の夫と婚姻する・いつでも親の戸籍へ戻るわけではない
・本人が筆頭者だからといって、離婚歴があるとは限らない
・親の戸籍から婚姻した形では違和感が生じにくい
・転籍だけでなく「戸籍の改製」でも同じことが起こる
・離婚歴が戸籍から消えるわけではない
・相続で戸籍をさかのぼるのは、相続人を確かめるため
・あわせて読む ・戸籍は過去の戸籍とつないで確認する

前提となるケース

 次のような女性を例にします。 

 以前に結婚しており、その婚姻では前の夫の氏を称していました。その後離婚し、さらに別の男性と再婚しています。

下の図は、この女性の戸籍が、離婚から再婚までにどう動いたかを並べたものです。 

  • 前の婚姻:前の夫の氏を称し、前の夫が筆頭者の戸籍に入る
  • 離婚:婚姻前の氏に戻り、親の戸籍へ復籍する。親の戸籍には、離婚によって入籍したことが記録される
  • 管外転籍:何かの事情で、親の戸籍ごと本籍が別の市区町村へ移る。転籍後の戸籍に、離婚の事項は移記されない
  • 再婚:現在の夫と婚姻する。妻の婚姻前の戸籍として出てくるのは、転籍後の親の戸籍 

 このような場合、現在の夫婦戸籍だけでなく、妻の婚姻前の戸籍まで見ても、過去の離婚歴が表面には現れていないことがあります。 

順番に確認します。

1 離婚して親の戸籍へ復籍する 

前の夫の氏を称していた妻は、離婚すると原則として婚姻前の氏に戻ります(民法767条1項)。 

 そして、婚姻前に入っていた戸籍が現存している場合には、原則としてその戸籍へ戻ります。戸籍法19条1項本文による取扱いです。 

たとえば、婚姻前に、父・母・娘の3人が入っている戸籍に入っていたとします。娘が婚姻して前の夫の氏を称し、その後離婚して婚姻前の氏に戻れば、原則として再び親の戸籍に入ります。 

この段階では、親の戸籍に、娘が離婚によって入籍したことが記録されています。したがって、この戸籍を見れば、離婚によって親の戸籍へ戻ったことが分かります。

2 その後、本籍が別の市区町村へ移った場合

その後、何かの事情で、父母と娘が入っている戸籍の本籍が別の市区町村へ移ったとします。いわゆる管外転籍です。

管外転籍によって新しい戸籍が編製される場合、それまで戸籍に記載されていたすべての事項が、そのまま新しい戸籍へ移されるわけではありません。新しい戸籍に書き写されるのは、戸籍法施行規則が定める移記事項に限られます。 

すでに終了している婚姻・離婚に関する事項は、転籍後の戸籍には移記されません。

もちろん、離婚歴そのものがなくなるわけではありません。転籍前の戸籍までさかのぼれば確認できます。 

3 その後、現在の夫と婚姻する 

その女性が現在の夫と婚姻し、夫の氏を夫婦の氏としたとします。新たに夫婦の戸籍が編製されます。

そして、妻について婚姻前の戸籍をたどると、出てくるのは管外転籍後の、父・母・娘が入っている親の戸籍です。この戸籍には、転籍前に記載されていた過去の離婚事項は移記されていません。 

そのため、婚姻前の戸籍だけを見れば、「婚姻前は父母の戸籍に入っていた」という、ごく一般的な形に見えます。 

 初婚の人でも、婚姻前に父母や養親の戸籍に入っていることは普通にあります。 

現在の夫婦戸籍を見ても、その一つ前の婚姻前の戸籍を見ても、特に違和感がない場合があります。 

いつでも親の戸籍へ戻るわけではない 

もっとも、離婚した人が必ずこのような戸籍の流れになるわけではありません。

 離婚後、本人を筆頭者とする戸籍が編製される場合もあります。その代表的な4つのケースを整理します。 

① 婚姻前の戸籍がすでに除籍になっている場合 

 離婚時に、婚姻前に入っていた戸籍がすでに除籍になっている場合、その戸籍へ戻ることはできません。この場合、戸籍法19条1項ただし書により、本人について新戸籍が編製されます。

 その後再婚すれば、本人を筆頭者とする戸籍から、新しい夫婦戸籍へ入ることになります。

② 離婚の際、自分を筆頭者とする新戸籍を作った場合

婚姻前の親の戸籍が残っていても、本人が新戸籍編製の申出をすることができます。この場合も戸籍法19条1項ただし書により、本人を筆頭者とする新戸籍が編製されます。

その後再婚した場合、婚姻前の戸籍を確認すると、本人自身が筆頭者となっています。 

③ 離婚後も婚姻中の氏を称した場合 

離婚後も、前の婚姻中に称していた氏をそのまま使用することができます。いわゆる婚氏続称です。離婚の日から3か月以内に、戸籍法77条の2による届出を行う場合です(民法767条2項)。 

この場合は、婚姻前の氏に戻って親の戸籍へ復籍するという流れにはなりません。 

戸籍法19条3項により、必要な場合には本人について新戸籍が編製されます。そのため、今回想定している通常のケースでは、再婚前の戸籍は本人を筆頭者とする戸籍になります。 

④ 親の戸籍へ戻った後、子どもを自分の戸籍に入れた場合 

離婚後、いったん親の戸籍へ復籍しても、その後、本人を筆頭者とする新戸籍が編製される場合があります。代表例が、前の婚姻で生まれた子どもを母と同じ戸籍へ入れる場合です。

離婚して母が親権者になっただけでは、子どもは自動的に母の戸籍へ移りません。子どもを母と同じ氏・戸籍にする場合には、原則として家庭裁判所で「子の氏の変更許可」を得たうえで、入籍届をすることになります。

このとき、祖父・祖母・母・子の三世代を一つの戸籍にするのではありません。戸籍法17条により、母を筆頭者とする新しい戸籍が編製され、母と子がその戸籍に記載されます。

その後母が再婚すれば、この本人を筆頭者とする戸籍から新しい夫婦戸籍へ入ることになります。 

離婚直後の氏と戸籍の動きについては、次の記事で詳しく整理しています。

離婚後の戸籍はどうなる?|旧姓に戻る・婚氏続称と子どもの戸籍を整理 


本人が筆頭者だからといって、離婚歴があるとは限らない

ここは注意が必要です。婚姻前の戸籍を確認して本人自身が筆頭者になっていたとしても、それだけで過去に離婚していたと判断することはできません。

本人を筆頭者とする戸籍が作られる理由は、離婚だけではないからです。たとえば、成年になった人が親の戸籍から分かれる分籍によっても、本人を筆頭者とする戸籍が作られます。 

「本人が筆頭者の戸籍=離婚歴がある」ということではありません。

ただし、戸籍の流れを確認する場合には、「この本人筆頭の戸籍は、どのような原因で編製されたのか」を確認する必要が出てきます。

本人が筆頭者になっている理由として考えられるものは、夫の場合を例に、次の記事で整理しています。

婚姻前から夫本人が戸籍の筆頭者である場合|前婚・分籍・帰化など考えられる理由 


親の戸籍から婚姻した形では違和感が生じにくい 

これに対して、離婚して親の戸籍へ復籍し、親の戸籍ごと管外転籍したあと、現在の夫と婚姻した、という流れでは、婚姻前の戸籍は親を筆頭者とする戸籍です。

初婚の人でも一般的に見られる形です。しかも、管外転籍後の戸籍には、それ以前の離婚事項は移記されていません。

そのため、現在の戸籍とその一つ前の婚姻前の戸籍だけを見ても、以前の離婚をうかがわせる記載が現れていない場合があります。

転籍だけでなく「戸籍の改製」でも同じことが起こる 

同様のことは、管外転籍以外でも起こります。代表的なのが、戸籍の改製です。 

過去には、紙で管理されていた戸籍をコンピュータ化するため、多くの戸籍が改製されています。

改製の際にも、それまでの戸籍に記載されていたすべての事項が、新しい戸籍へ移記されるわけではありません。すでに終了していた婚姻・離婚に関する事項については、改製後の戸籍に移記されない場合があります。 

  • 離婚:婚姻前の氏に戻り、親の戸籍へ復籍する
  • 改製:親の戸籍が改製される(コンピュータ化など)
  • 再婚:改製後の親の戸籍から、現在の夫と婚姻する 

この場合にも、改製後の婚姻前の戸籍だけを見ても、それ以前の離婚事項が記載されていないことがあります。

さらにその前の改製原戸籍までさかのぼることで、過去の記録を確認できます。

離婚歴が戸籍から消えるわけではない 

ここまでの説明で重要なのは、転籍や改製によって、離婚歴そのものが消えるわけではないという点です。 【本文】 現在の戸籍や、その一つ前の戸籍には記載されていなくても、過去の戸籍まで順番にさかのぼれば、婚姻や離婚の経過を確認することができます。 

現在戸籍一枚、あるいは婚姻前の戸籍一枚だけで、その人のこれまでの婚姻歴がすべて分かるわけではありません。 

相続で戸籍をさかのぼるのは、相続人を確かめるため 

転籍や改製によって過去の離婚が見えにくくなる仕組みは、以上のとおりです。過去の戸籍まで順番にさかのぼれば、確かめられます。 

もっとも、相続の手続で戸籍をさかのぼるのは、離婚歴を確かめるためではありません。誰が相続人になるかを確定するためです。前の婚姻で生まれた子がいれば、その子も相続人になります。現在の戸籍だけで範囲を判断すると、遺産分割の話し合いそのものがやり直しになります。

分かれ目は、現在の戸籍とその一つ前の戸籍で終わらせず、亡くなった方の出生まで、途切れずにつないで確かめるかどうかです。

全体の流れの中でいまどこを考えているかは相続の道筋地図で、似た状況でほかのご家族がどう決めたかは相続の判断例で確かめられます。 

相続の道筋地図 

 相続の判断例  

 

あわせて読む

  • 戸籍の取得と広域交付:相続では、現在の戸籍だけでなく過去の戸籍まで確認する場面があります。必要な戸籍の範囲と取得方法をまとめています

戸籍の取得と戸籍広域交付制度|相続で必要な戸籍・集め方・注意点をまとめて整理 

戸籍は過去の戸籍とつないで確認する 

戸籍には、婚姻・離婚・親子関係など、その人の身分関係が記録されています。

しかし、婚姻による新戸籍の編製、離婚による復籍や新戸籍の編製、転籍、改製などによって、戸籍そのものが途中で変わることがあります。 

そのため、必要な身分関係を確認するときは、現在の戸籍だけでなく、従前の戸籍、さらにその前の戸籍へとつないで確認します。相続手続で、亡くなった方について出生から死亡までの戸籍を確認するのも同じ理由です。 

戸籍一枚だけを見て、その人の過去の身分関係をすべて判断することはできない。

離婚歴についても、この戸籍の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。なお、実際の記載内容は、戸籍の作られ方や時期によって異なる場合があります。 

戸籍をさかのぼっている途中で、前の婚姻や、知らなかった相続人が見つかった段階でも、ご相談いただけます。初回のご相談は無料です。 


司法書士田中康雅事務所
〒215-0004
神奈川県川崎市麻生区万福寺6丁目2-10
 新百合丘レジデンス402
新百合ヶ丘駅 徒歩5〜6分
電話:044-969-2262
受付:平日9:00〜20:00/土曜9:00〜18:00/
日祝は予約制
初回のご相談は無料です

司法書士田中康雅事務所|新百合ヶ丘・麻生区の相続相談

新百合ヶ丘・川崎市麻生区の司法書士田中康雅事務所。相続実務30年以上の司法書士が直接対応。「心を軽くする相続」をコンセプトに、相続登記・全部まとめて遺産整理から、自宅・不動産の承継、遺産分割、遺言、生前・2次相続対策まで、法・税・暮らし・想いの4視点で道筋を整理。相続税は税理士と連携。まず当事務所で整理し、必要になったときに弁護士をご紹介。NPO法人相続アドバイザー協議会専務理事。

0コメント

  • 1000 / 1000